通夜や葬儀は、(建前上)自ら進んで参列するものですが、法事は基本的に招かれて出席するものです。
故人と近い親戚だけでなく友人知人まで対象となる場合もあります。いざ法事に招かれた時、困らないために法事のマナーをおさらいしていきましょう。なお、仏教での法事を前提とします。
法事とは
法事とは、故人を供養するために行うもので、故人があの世で良い報いが受けられるようにとの意味合いもあることから「追善供養」とも呼ばれます。
死後七日ごとの初七日、二七日(14日)、三七日(21日)、四七日(28日)、五七日(35日)、六七日(42日)、七七日(49日)は忌日法要、一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌等は年忌法要と言われます。
仏教の考え方では、死者は49日まではあの世とこの世をさまよう期間とされ、これを中陰と言います。そのため49日の法事は満中陰として、この日を持って忌明けとされます。
49日までの忌日法要、その後の年忌法要によって故人を供養し、また残された人たちが一同に会することによってその縁を結びなおす機会をもつといった意味も込められていますので、招かれたらなるべく出席するようにしましょう。
案内状が来たら
法事では、通常施主より案内状が送られてきます。
返信は○月○日までにと記載されていますが、その日にちに拘らずなるべく早めに返事をしましょう。
施主は、法事後の会食や引き出物の準備をしなければならないため、早めに出席する人数を把握したいからです。
また、日程については仕事や学校の都合に合わせて法事日の直前の土日に設定されることが多いですし、前述したように故人を偲び縁のある人々が一同に会する場でもありますので、やむを得ない場合を除き出席しましょう。
欠席する場合は、案内状の返信より先に電話で一報を入れます。欠席の理由は具体的に述べず「やむを得ない事情で」とにごすのが一般的ですが、関係性や事情によっては話した方がいい場合もあります。
服装はどうしたらいいの?
49日までの忌日法要と一周忌は、ブラックフォーマルを着用するのが無難です。
男性は白のワイシャツに黒のネクタイ、靴下や靴も黒で統一します。
女性は靴だけでなくストッキングも黒にします。肌色のストッキングや素足はマナー違反です。
学生の場合、制服があれば制服を着用し、靴下や靴もそれに準じます。
必ずしも黒でないといけないわけではありませんが、あまり派手なものは避けましょう。制服がない場合は黒やグレー、紺などダークな色の私服を着用します。
また、子どもであっても素足はいけません。必ず靴下を履かせましょう。
三回忌以降は、「平服で」と案内状に記されている場合がありますが、平服とは普段着のことではありませんので注意しましょう。
黒や濃いグレーのスーツやワンピースがいいでしょう。ネクタイや靴などの小物は黒で統一します。
ただし、ほかの出席者との兼ね合いや法事の会場によって、良しとされる服装が異なる場合もありますので、施主に確認してみるのもいいかもしれません。
なお、施主は遠慮から「普段着で」などと言うことも考えられますので、その場合はほかの親戚や出席者にも聞いてみましょう。
当日持っていくものは?
法事の当日に必ず持参するものは、香典、お供え物、数珠です。
遠方から泊りがけで出席する場合は、宿泊の準備はもちろんですが、移動や宿泊先での服装と法事に出席する服装とは違いますので、着替えや靴を忘れずに持っていきましょう。
これらは安価なものではありませんし、現地で調達するのはなかなか大変です。また、小さいためか数珠も忘れがちです。
お参りの際に必要ですので、あらかじめバッグに入れておくなどして当日慌てないようにしましょう。香典はふくさに包んで持参します。
香典とお供え物
法事では会食や引き出物の用意がされていることが多いので、香典の額もそのことを考慮に入れます。
地域の慣習や故人との関係性にもよりますが、相場はおおよそ1万~2万円で、夫婦で出席の場合は2万円~、子どもを同伴する場合は一人につきプラス5千円と考えるとよさそうです。
香典を新札で用意するかどうかは意見が分かれるところです。
弔事では「準備していた」という感じを出すことはタブーですので、通夜や葬儀には新札ではないお札を用意しますが、法事はあらかじめ分かっているものなので新札でも良いとする考え方もあります。
苦肉の策とも言えますが、新札を用意したうえでわざと折って折り目をつけるという方法もあります。
いずれにしても迷った場合は親戚などに相談するのがいいでしょう。
香典袋の表書きは「御霊前」や「御仏前」とされていますが、宗派によっても異なりますので、敢えて無難な「御香典」「御香料」としてもよいでしょう。
また、弔事ですので水引は「二度と同じことが起きないように」との意味がある結び切りで、色は49日までは黒白、それ以降は黄白とされています。
お供え物は、お菓子や果物など2千~3千円のものを用意しますが、地域によって慣習が異なりますのであらかじめ確認しておきましょう。
法事が終わったあと、出席した人で分け合って持ち帰ることも多いため、個装されたものが便利です。また、お供え物は持参したら勝手に仏壇等に供えたりせず、必ず施主に「どうぞお供えしてください」と手渡します。
法事に欠席する場合は、香典を現金書留で送るようにします。会食や引き出物を考慮しない金額となりますので、5千円くらいがいいでしょう。
あまり高額だと施主に気を遣わせてしまいます。出席できないお詫びを添えるとなおいいですね。
まとめ
通夜や葬儀よりも意外と参列する機会の少ない法事。いろいろな決まりごともあって、難しいと思われるかもしれませんが、そういうことを受け継いでいく機会でもあります。
特に若い方なら勝手な自己判断をして間違えるより、ご実家に尋ねながら徐々に覚えていけばいいのだと考えれば気が楽になりませんか?
今では年配の親戚のおじさんやおばさんも若い頃にはそうやって覚えていったのです。
法事は故人が用意してくれた親しい人たちとの集いの場だとも言えます。みんなで故人を偲び感謝しましょう。