家族葬のメリットデメリットについて

「葬儀は家族葬でお願いしたい」

「家族だけで静かに送ってもらいたいと思っている」

「家族葬などのメリットのある葬儀方法にしたい。家族に苦労のないように」

葬儀に対し、このような話をよく耳にします。葬儀といえば自宅の仏間や、葬儀場のホールで執り行うという印象がありました。しかし近年の葬儀はかたちにとらわれず、家族葬や密葬など自分や家族が本当にメリットを感じられる葬儀を自由に選択できる時代になっています。そんな中でよく耳にするのが「家族葬」といった葬儀形態を指定する言葉です。

家族葬にはどんなメリットがあるのでしょうか。葬儀のかたちを選択する上で知っておきたい家族葬のメリットとデメリットに迫ります。

ライフスタイルの多様化により家族葬に注目が

現代社会のライフスタイルは多様化しています。朝の8時に出勤して17時に終業するという昔ながらの仕事スタイルだけでなく、会社に属しながらシステムやインターネットを使い家にいながら仕事をする方などもいます。自分で起業する方もいますし、夜勤や交代制で働く方もいます。海外と日本を行ったり来たりして仕事をしている方もいます。まさに、生活自体が多様化している時代です。

生活が多様化しているということは、家族のかたちもライフスタイルに合わせて多様化していると言えるのではないでしょうか。テレビや雑誌の家族のライフサイクルに関する特集を見ても、結婚式をはじめとしたイベントや家族の共同生活についても「朝起きて夜は帰宅して家族全員で食事をして寝る」「祖父母から孫までの大家族」といった、昔通りの型には必ずしもはまってはいません。

家族ごとに家族の事情があり、ライフスタイルがある。ライフスタイルに合わせてイベントも変化します。それは、人生の中で一大イベントである葬儀も同じです。慣習に従って必ず大ホールや仏間で葬儀を執り行うことは、現代のライフスタイルの多様化を考えれば、必ずしも望ましいことではないはずです。だからこそ、葬儀も世の中に合わせて「色々なかたち」が登場しています。中でも家族葬はメリットもあると、一躍有名になった葬儀形態です。

言葉が有名になることには、相応の理由があります。もちろん、家族葬にメリットがあると多くの方が考えたからこそ、ここまで有名な言葉になったのです。家族葬のメリットとは、具体的にどんなものなのでしょうか。デメリットと合わせて考えてみましょう。

家族葬の3つのメリットとは

実は、本来「家族葬」という葬儀形態はありません。

自宅を使う葬儀を「自宅葬」と呼んだりすることもありますが、葬儀形態を区別する際に使われるにすぎません。お坊さんや葬儀に携わる方の中には、「家族葬という言葉はないよ」「仏教式葬やキリスト教式葬という区別はあるけど、家族葬という形態はないよ」とおっしゃる方もいます。
確かにそれも一つの正解ではあるのですが、家族葬が注目され、れっきとした葬儀形態を表現する言葉の一つとして使われている現在、葬儀社に勤めている担当に対し「家族葬」という言葉を使っても、もちろん通じます。

ここで、もう一度、家族葬の意味についておさらいしておきましょう。家族葬は大体30人くらいの参列者を想定した規模の小さな葬儀を指します。もちろん参列者の中心になるのは家族や親族です。故人の友人や同僚でもごく親しい方以外には伝えず、ひっそりと行う式を家族葬といいます。密葬と勘違いして使われることもありますが、密葬とは異なる葬儀です。簡単に「親族や家族のみ、または家族や親族を中心に執り行う小規模かつ少人数の葬儀」と解釈するといいでしょう。この家族葬の意味こそが、家族葬のメリットに直結します。

  1. 費用を抑えることができる

    一つ目のメリットは、葬儀費用を抑えることができるという点です。
    家族葬を出すためには葬祭ホールの大きな広間を借り切る必要はありません。小さなお座敷があれば、お座敷に祭壇を作ってもらうかたちで葬儀を出すことができます。ホールよりもお座敷を借りる方が金銭的な負担が少ないため、費用を抑えることができるというメリットがあるのです。

    また、参列者を家族や親族、ごく親しい友人や同僚というかたちで少人数にしぼれば、その分だけ費用を抑えることができます。最近は葬儀会社も家族葬専用のプランなどを展開しているところもあります。もちろん大規模なホールを使った葬儀よりも費用は低めに設定されていることが多いです。

    ただし、この家族葬のメリットはデメリットにもなります。

    事前にしっかりとプランニングしておかないと、参列者が予想外に多くなってしまって会場内に入りきらなかったり、家族葬プランに含まれていない道具を予想外にそろえなければならなかったりと、出費が重なることがあります。

  2. 自由度が高く事情に合わせてカスタマイズできる

    二つ目のメリットは、式を家族に合わせてカスタマイズできることが多いという点です。
    大きな葬儀の場合、式場や流れはある程度限られてしまいます。しかし家族葬という小規模な葬儀形態だからこそ、家族葬には柔軟性があります。式場の選択から葬儀店の用意しているオプションまで色々組み合わせ、自分たちに合った葬儀にカスタマイズできることは家族葬の大きなメリットであると言えるでしょう。

    ただし、この家族葬のメリットも時にデメリットになります。カスタマイズできるということは、カスタマイズした分だけ費用が余計にかさむということでもあります。せっかく小規模な葬儀にして費用を低く抑えようとしたのに、カスタマイズし過ぎてかえって高上りになってしまっては意味がありません。

    費用と葬儀への希望は、バランスが重要です。事前に費用面も合わせてよく相談しておくことも大切です。

  3. 労力面の負担を軽減できる可能性

    三つめのメリットは、葬儀に必要な家族の労力を軽減できる可能性です。
    葬儀の規模が小さいと、基本的に大規模な葬儀よりも家族の体力的な負担は小さくなります。百人の参列者の応対をするより、十人の参列者の応対をする方が体力面の負担は少なくなります。しかも家族葬は家族や親族が参列者の中心になりますので、気持ちの面でも負担が少なく、融通も利くことが多いのです。知っている仲であれば格式ばったことを無理に行わず、家族間で負担が少ないかたちに式をカスタマイズすることもスムーズに進みます。

    しかし、この家族葬のメリットも時にデメリットに変わってしまうことがあるのです。

    時に融通が利きすぎて、家族間に齟齬が生まれることがあります。柔軟に葬儀を変えてしまい、連絡ミスなどによって確執が生まれてしまうことがあります。葬儀の後も家族関係、そして親族関係は続くことを理解し、規模が小さくても、連絡はしっかり行いたいところです。

最後に

家族葬にはメリットがあります。だからこそ家族葬はここまで有名な葬儀形態になったと言えるでしょう。前述したように、家族葬という葬儀形態は、本来は存在しません。しかし、家族葬のメリットがたくさんの人に受け入れられた結果、一つの言葉として葬儀業界のみならず一般社会の中でも使われるようになりました。

メリットを最大限活かしたい場合は、葬儀店に前もって伝えておくことをお勧めします。先に自分たちが望むカスタマイズを行った場合の見積もりを作成してもらい、その見積もりをベースにしてさらにカスタマイズをするといいでしょう。葬儀店のアドバイスをもらいながら、家族葬のメリットを活かすかたちで、自分たちなりの葬儀のかたちについて考えてみてはいかがでしょう。