葬儀というセレモニーに優しさを添えるのがお花ですが、ご仏壇やお墓にもお花は欠かせないものです。
仏様に捧げる花はどんな花が適していていて、どんな花が不適切なのでしょうか。
また、仏花にはどのような意味合いがあるのでしょうか。
目次
お墓参りに適した花と避けたい花
お墓参りには特別適した花や避けたい花の決まりはありませんが、花屋さんなどで一対として売っているものは、それなりに理にかなっているので参考にするとよいでしょう。
お墓参りの花に適した花
まず仏花は花の水上りがよく、日持ちがすることが第一です。
炎天下の夏場は特に傷みやすく、せっかくのお花もすぐにダメになってしまうため、樒(しきみ)やヒバなど丈夫な緑を背にして、花もちの良い菊がメインに活けられることが多いようです。
菊は平安時代から邪気を払う高貴な花とされており、かの源氏物語にも登場します。
今も9月9日は重陽の節句として、お祝いをする習慣が残っています。
最近では菊の種類はとても多く、菊だけでも様々なバリエーションの仏花が作れるので、お手製の仏花を作ってお墓参りに持参してはどうでしょうか。
その場合、本数は奇数に、形としては市販の仏花のように背の高いものを背景にひし形にまとめ、水につかる部分の葉はきれいに取り去って、水が腐りにくいようにしておきます。
基本的に四十九日までは白菊を中心に用いますが、その後は自由で比較的派手な色合いの取り合わせが多いようです。
菊にその季節の丈夫な花を取り合わせた仏花が、花持ちがよいのでおすすめです。
花に水分が少ないものは枯れていても目立たないので、夏場なら麦わら草やケイトウなどカサカサした花を選ぶと良いでしょう。
お墓参りににさけたい花
あまりにも水揚げが悪い花や、光に弱い花はさけた方が無難ですが、毒やトゲのある花、臭いのきつい花、ツル性の花、花粉の多い花も控えましょう。
もし、故人がバラが好きでバラを使いたいなら、トゲを取ってから使うようにしましょう。
植物には多少なりともアルカロイドといった毒性が含まれているので、さほど気にすることはありません。
つる性のものは生命力の強いものが多く、お墓に絡みつく場合もあるので避けた方が良いでしょう。
ユリなど花粉が多い花を用いる場合は、墓石などを汚さないために花粉の黄色いところを取ってってから使うようにします。
毒のある樒(しきみ)が仏花に用いられる理由
樒には花や葉や実に毒性がありますが、必ずと言っていいほど仏花に用いられます。
それは昔からのしきたりで、かつて土葬だった頃、動物などがお墓を荒らすのを避けるために棺に入れたことが由来とされています。
現代では、仏花に樒を用いないところもあれば、樒のみを使う地方もあるようです。
神道では榊(さかき)のみをつかいますが、お墓の花の選び方も様々です。
オリジナルなお花も素敵です
買ったお花をお墓参りに持参するだけでなく、庭に咲いた花や野の花をアレンジしてお参りに持参するととても長持ちします。
特に個人が生前育てていた花などがあれば、その花をアレンジして供えると供養になります。
庭の花をアレンジする場合は、一晩水に浸けておき翌朝アレンジしてお墓に持って行くと日持ちがします。
仏花には常緑の葉を背に色花を取り合わせるのが基本とされているので、庭の花を仏花に組むときは、ヒバやマサキ、コウヤマキなど緑を用いるようにしましょう。
お墓参りのマナーについて
お墓参りにはぜひお花を持参したいですがその他に何を持って行けばよいのでしょうか?
一般的には「五供」といって香、花、灯燭、浄水、飲食を供えるのが基本です。
香はお線香、花はお供え花、灯燭はろうそく、浄水は水、飲食は飲食物のお供え物です。
それと数珠です。
掃除用具や杓子、手桶などもあれば用意したいものですが、霊園やお寺で貸してもらえるところもあります。
しかし、自分たちがお墓参りをする前にすでに誰かが参っていることも考えられるので、近しい間柄なら相談し合ってお参りすると良いでしょう。
お墓参りの手順について
まずは枯れた花などをとり除き、掃除をします。
その後花立てに水を入れてお花を一対お供えします。
お酒など故人の好きだったものをお供えします。
次に、線香に火をつけてお供えします。
お墓参りはいつ行くのがよいか?
お墓参りは、自分の気持ち次第でいつ行ってもかまいませんが、命日や祥月命日のほか、お盆やお彼岸にお参りすることが多いようです。
本当はどっちが正解なの?
・お墓を洗ったり水をかけると、墓石が傷むからよくないと言われる場合と、清めの意味や仏様の喉の渇きを癒すために水をたっぷりかけた方が良いという場合がありますが、実際はどっちが正解なのでしょうか。
それぞれのお家の習慣なのでどちらが正解ということはないようです。
ただ、ビールやお酒は臭いのもととなるうえ、墓石が傷む原因にもなるのでNGです。
お供え花は造花ではだめなの?
ダメという決まりはなく、実際は造花を使っている人もいるようですが、生花ははかなさの象徴でもあります。
墓前にお供えした花は、「こんなに美しく咲いていても、数日後には枯れ果てる」ということを、花を手向ける者に知らしめる役目もしているのです。
お供え花がお墓を向いてではなく、手を合わせて拝む人の方を向いているのは、「人の命のはかなさ」を認識して今日を悔いなく生きることを教えるためです。
お参りする人の心を清浄にする効果は生花の方があるようです。
仏教では無常感や命の大切さを生きている人に認識させるためのものといえます。
まとめ
お墓参りにはお花をお供えする習わしがありますが、これは先祖や故人に捧げるのではなく、実はお参りをする人の心を安定させるためといいます。
仏教の奥深さを感じますが、お墓もご仏壇もすべてはこの世に生きている人の心のよりどころかも知れません。
お花を選ぶときはことさらこだわらずに、故人の好きな花や自分の好きな花を選ぶと良いでしょう。
人々は、原始の時代から植物と一緒に葬られてきました。
植物に触れるだけでもよい気が得られ、悲しみが癒えていきます。
心が疲れた時にはお花をもって、お墓参りをしてみませんか?