ご焼香の作法は?これを読めばすべてわかるご焼香のやり方

年齢や職業、地域の慣習や役割などによって個人差はとても大きいですが、お通夜やお葬式に参列することは普通、日常的なことではなく回数もさほど多いものではありません。

なんとなく分かっているようで実はあまり自信が持てないご焼香の作法について学んでいきましょう

焼香とは

焼香とは、仏式の葬儀や法事で香を焚くことです死者を弔うために香を焚いて拝みます。

通夜や葬式、法事では粉末状のお香「抹香(まっこう)」を焚くことがほとんどです。

お焼香の意味は自身の不浄を祓い清らかな心身で死者や仏様にお参りする、香は仏様にとって食物であるなどと言われていますが、実際にはご遺体の腐敗臭を消すためといった目的もあります。

お通夜の時にはろうそくの火とお香を絶やさないように夜通し寝ずの番をしますが、これもご遺体の臭い消しを考慮した慣習といえます。

焼香の作法

焼香の作法は、宗派によって異なります

故人の家の宗派に合わせる、もしくは自分の宗派に合わせる、のどちらかになりますがお互いの宗派を尊重して信教の自由を損なわない配慮が必要です。

以下、主な宗派別の焼香のしかたを記します。

共通するのは「数珠を左手に持って、右手の親指と人差し指と中指でお香をつまむ」ことです。

また、浄土真宗以外では香を戴くといって、お香をつまんだら額の前まで上げる動作をします。また、その際には左手を軽く添えます。

天台宗

回数については特に定めはありません。1~3回焼香します。

真言宗

通常3回です。この「3」という数字は、仏・法・僧に供養すること、身・口・意の三蜜修行に精進すること、戒香・定香・解脱香といって自らが戒律を保ち、心の静寂を求めることができる功徳があることと説明されています。

浄土宗

回数については特に定めはありません。「真心をこめて一心に行う」という意味で1回、「身を清めるために1回、心を静めるために1回」という意味で2回、「仏・法・僧への帰依」「過去・現在・未来の衆生に回向」という意味で3回などと説明されています。

臨済宗

回数にこだわりませんが、通常1回とされています。

曹洞宗

回数にこだわりませんが、通常2回とされています。その場合2回目は香を戴かないことが多いです。

日蓮宗

通常3回です。仏・法・僧の三宝供養とも、「空・仮・中の三諦」にならうとも言われています。

浄土真宗

あくまで自分の心身を清めるためとも説明され、香を戴くことはしません。回数は、本願寺派(西)では1回、大谷派(東)では2回とされています。線香を用いる場合には本数は気にせず、立てないで香炉に横にします。

焼香の仕方

一般的な葬儀会館では立って焼香を行う「立礼焼香」がほとんどです。

祭壇の手前に焼香台と香炉が配置されていますので、席を立ったら祭壇の前まで静かに進み、立った状態で焼香します。

寺院や自宅の和室で葬儀を執り行う場合、焼香台は座る高さに設置されています。

立って、または立ち上がらずに焼香台の前まで進み座って焼香します。これを「座礼焼香」といいます。

また、式場が狭くて祭壇前まで移動することが困難な場合「回し焼香」を行います。これはお盆などに香炉とお香を載せて、参列者の間で回してそれぞれ自分が座っている位置で焼香するものです。

お盆を受け取ったら自分の前か膝の上に置いて焼香します。ただし、お盆の上は滑る場合もあります。香炉はかなり高温になっていますので、落としたりしないよう充分に気を付けましょう。

焼香順について

親族間のトラブルの原因の一つともいわれるほど重要な焼香順。

一般的には焼香は故人と関係が近い順に行います。

したがって①喪主②故人の配偶者③喪主の配偶者と子④喪主の兄弟姉妹と子(家族単位で)⑤故人の兄弟姉妹⑥故人の配偶者の兄弟姉妹⑦故人の配偶者の親・・・となるわけです。

ただしこれは一般的な順番ですので、葬儀を執り行う立場になったときには、喪主が事前に決めておきましょう。

その際には後々親族同士でトラブルとならないように、影響力を持つ年長の親族にも相談します。相談された方はさまざまな方面に配慮して喪主を助ける必要があります。

以上の親族焼香の次は一般焼香です。時には代表焼香と言われる焼香が行われる場合もあります。

代表焼香とは、会社や団体を代表して行う焼香のことです。町内会や自治体、関係団体などの組織の代表です。これもあらかじめ順番を決めておきましょう。参列者は焼香順に従って焼香していきます。

その他注意点

宗派によって焼香の回数が異なりますが、参列者が大勢いる場合は定められた回数が複数回だったとしても、丁重に1回焼香するなどの配慮が必要です。

また、クリスチャンなど仏教以外の信者の中には、仏教の作法である焼香をしたくないという人もいます。焼香せずに頭を下げて黙とうしていくことになるようですが、決して焼香を無理強いしてはいけません。

誰しもがお互いの信教の自由を損なうことがないようにしましょう。

そして一部で疑問の声が上がっているのが、会葬者による焼香時の過剰な作法です。

祭壇の前に出る時に周りの参列者に礼をして、祭壇の前では遺族に深く礼をして、焼香台にいる両サイドの参列者に礼をするなどは、本来必要のない過剰な作法だと言われています。

会葬者が遺族に深く礼をすれば、遺族も都度立ち上がり深く礼をしなければなりません。

会葬者はそれぞれ一度で済みますが、遺族は何度も何度も繰り返さなければならず大変です。さらに焼香を終えたあとも同様のことをしていれば、ただでさえ精神的負担の多い遺族にさらなる負担を強いることになります。

会葬者は祭壇中央に礼をし、一歩前に出て焼香、その後一歩下がって遺族には軽く会釈をする程度でいいのです。会葬者同士も礼は不要です。

まとめ

焼香の仕方がよく分からない場合は、前の人の焼香を見て参考にするのも一つの方法ですが、前の人の焼香を後ろから見たら香を戴いている姿が口元に香を運んでいるように見えて食べる真似をしてしまったという笑い話もあるようです。

いずれにしても一番大切なのは作法ではなく故人を弔う気持ちです。

焼香の作法に宗派による違いはあっても、そのことは忘れてはなりません。