生活の中で夕飯の準備に関わる機会はとても多いです。人間は食事をしなければ生きていくことはできませんから、自然とその準備に関わる機会は多くなります。しかし、事が冠婚葬祭であったらどうでしょう。
人間が生まれたからには何時か死にます。生と死は日本人の生活の中に、日常のこととして組み込まれています。しかし、人の死に関わる機会と夕飯の準備に関わる機会を比較すると、後者の方が圧倒的に多いです。
夕飯の準備が得意な人でも生活における葬儀に精通しているわけではありません。
繰り返し行ってきたことは覚えますが、葬儀は毎日のようにあるわけではないので、マナーや準備について覚え難いところがあります。退職間近で仕事に詳しいおじさんでも、葬儀に精通しているとは限りません。生と死は人間の日常の中に存在していますが、やはり仕事のように毎日のこと、反復しやすいことではないからです。
今回は、人の死後に必用な「納骨」についてお話します。
納骨は「何時でもいい」が答え!しないことも
実は、納骨に決まった時期はおりません。「3月4日に亡くなったからといって一週間以内に納骨してください」などのルールもありません。また、絶対にお墓に納骨しなければいけないという法律もありません。実際に、お墓を用意していないなどの理由により、お骨を自宅の仏壇に安置しているご家庭もあります。
また、自分の家のお墓に納骨せず、お墓以外の場所に納骨したり、散骨といった納骨以外の方法を選択したりする人もいます。中には「まだ気持ちの整理がつかない」という事情で納骨をためらう人もいます。
納骨は「この時期までにしなければならない」ものではなく、家族に事情に合わせて行っていいのです。
出だしでいきなり結論を話してしまいました。これが日本における納骨の状況であり、ルールです。
- 納骨は何時までしなければならないという決まりはない
- 納骨をしていないお宅もある
- お墓への納骨以外の方法もある
- 納骨については遺族が決めるか、故人があらかじめ自分の望む方法(散骨など)を指定しておく
これが答えです。
ただ、一般的には流れに沿ってお墓に納骨します。納骨はお墓という印象が非常に多く、「何時までしなければならないの?」「手順は?」「時期は?」と疑問を覚える人がたくさんいるのも、これが理由ではないでしょうか。
まずは一般的によく行われる納骨の流れについてお話ししましょう。
納骨式をする場合の手順とは?
一般的な納骨には二つのパターンがあります。葬儀の後に火葬をし、その流れで
すぐに納骨をするというパターンが一つです。このパターンの場合、火葬の後に
葬儀の参列者と共に墓地に向かい、参列者と喪主でお墓にお骨を納めることになります。
もう一つのパターンは、四十九日を一つの節目として納骨をするパターンです。
四十九日が終わるまでお骨は仏壇に安置し、四十九日が終わった時点で家族がお骨をお墓に納めます。
「一般的」という言葉で説明しましたが、あくまで「多数派」という意味ですので、これ以外の
納骨の手順がいけないわけではありません。お家によっては「他にも手を合わせにくるから」
ということで、百か日法要まで仏壇に安置することもあります。お盆や彼岸、
一周忌を一つの区切りとして納骨をすることもあります。この他にも、お墓がないため
お墓の準備ができてから納骨をするということもありますし、郷里のお墓に納骨するため
長期のお休みに親族の都合に合わせて納骨するということもあります。
葬儀や火葬とは別に「納骨式」というかたちで納骨の法要を行うこともあります。
火葬や葬儀、四十九日の中に納骨を手順として組み込むことはとても多いですが、それが絶対というわけではありません。期限もありませんから、家の事情や心情に合わせて納骨してもいいのです。
納骨のために「納骨式」をとり行う場合は、次のような手順で行います。
- 納骨するお墓のある霊園や墓地の管理者に納骨の連絡をする
- お坊さんに予定を話し、法要の準備(卒塔婆など)をお願いする
- 葬儀店や石材店に予定を連絡する(お墓の石を動かさなければならないため)
- 参列してもらう人たちに日時を連絡
- 自治体に発行してもらった許可証の確認(納骨のためには自治体の許可証が必要)
参照 http://gyousei-suzuki.sakura.ne.jp/custom5.html - お供えや参列者への引き出物を準備する
- 納骨式(納骨をする)
「納骨に決まりはない」イコール「自由にしていい」ではない
一点だけ、お骨についての注意事項をお話しします。
納骨に期限はありませんし、何時頃納骨をするかも家庭事情に合わせてもらって大丈夫という結論でした。
しかし、全てが自由というわけではありません。あくまで「納める」ことに対しては
時間的なものや強制がないというだけで、「お骨を好きにしていい」ということと
イコールではないということです。
例えばAさんのお宅はお墓がないため、葬儀は執り行いましたが納骨はしていませんでした。
仏壇には位牌と納骨が一緒に置いてあります。家族の話し合いでよく「お骨どうしよう」
という話題が出て困っていました。それというのも、Aさんのお宅はお墓を用意するお金がなく、
今後も暫くお墓を用意する金銭的な余裕は生まれそうになかったからです。
「散骨という言葉もあることだし、近所の景観の良い場所に撒いてしまえば良いのでは?」
とAさんは考えました。これは許されることなのでしょうか。
確かに、近年では海などへの散骨も行われています。
しかしこれはあくまできちんと手続きを踏んで行っていることであって、
個人で勝手に骨を撒いていいわけではありません。故人や遺族が散骨を望むなら
ちゃんとした業者を通し、必要な手続きや準備のもとに行いましょう。
最後に
納骨に期限はなく、葬儀の流れで納骨する場合や、四十九日や百か日法要を
一区切りとして納骨するなど、それぞれの地域や家の考え方に合わせて行われています。
もちろんお墓の用意ができない場合や気持ちの整理がつかない場合、親族の集まれる
長期の休みに行いたい場合などは、この限りではありません。納骨をするために
納骨式の予定を組んで納骨をすることも可能です。
納骨に絶対のルールはありません。ただし、これはあくまで各家庭のお
墓の用意といった事情に合わせて行っても良いという意味で、自由に散骨したり
庭に埋めたりしてもいいという意味ではありません。
人間は何時か死ぬものです。納骨という機会はそう何度も訪れるものではないかもしれませんが、葬儀に必要な知識として覚えておきたいですね。