お焼香の種類と正しいマナーについて

葬儀のマナーに悩むことは、何も新卒社会人だけではありません。地域によりお葬式の方法やお葬式に付属する行事、そして服装や数珠に関してもかなり違いがあります。

例としては、地域によって赤房や桃色房の数珠はタブーであるとされていますが、地域によっては特に色にはこだわらないという数珠に関するルールがあります。また、地域によって香典の目安となる金額が異なるということも有名な話です。他にも、地域特有のルールや行事などがあり、お葬式には多くの方が「難しい」という印象を持っているようです。自分の地域のお葬式については知っていても、遠方のお葬式に呼ばれたらイロハが違っていて戸惑うということもよくあるようです。

そんなお葬式を難しくしている要因の一つとして、「仏教の宗派」があります。日本にはいくつもの宗派があり、地域やどこに寺院の檀家になっているかによってお葬式のマナーが変わってくるのです。地域の慣例だけでなくこの宗派についても知っておかないとマナー違反になるということで、お葬式に出席する直前に慌てて調べる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は宗派ごとに異なる葬儀のマナーの内、「お焼香」に焦点を当てて解説します。お葬式を取り行う方もマナーに頭を悩ませますが、出席する側だって悩みます。簡単にお焼香のマナーと宗派ごとの回数だけを押さえてしまいましょう。

お焼香のマナーと方法は?基本の流れ

まずはお焼香の方法について確認しましょう。

お焼香には宗派ごとに回数があります。しかし、方法としてはほとんどの宗派が共通しているため、お焼香の方法を押さえてしまえば後は宗派ごとの回数を覚えるだけと言えます。

確かにお坊さんなどの専門的な知識を持つ方は「儀式や宗派によってかなりの違いがある」とおっしゃるかもしれません。しかし一般の人が葬儀に列席するのであれば仏教の専門知識を深く学び、仏教に数多くある儀式ごとの微細な違いや宗教的な意味合いまで深く理解する必要はありません。「基本的なお焼香のマナー」と「宗派ごとのお焼香の回数」を基本として押さえておきましょう。

お焼香の手順は簡単です。お焼香の順番は故人との縁の深さで決まります。故人との縁が深い人(喪主)からはじまるのが一般的で、喪主の後は遺族や関係の近い親族などがお焼香をします。葬儀の際は故人との関係を考えて席次が決められることが多いため、席順ごとにお焼香の順番が回って来ることが多いです。お焼香の段になってもいきなり席を立ちあがらず、席次が前に人がお焼香を済ませるまで静かに待つことになります。

お焼香の順番が自分に回ってきたら、静かに席を立ち焼香台の前に立ち遺影に一礼してからお焼香をします。席を立つ必要がない場合は、お焼香の香炉が前順の人から回って来ますので、受け取ってお焼香をします。

お焼香では、まずは右手の親指、人差し指、中指の三本の指で抹香をつまみ、額に押し頂くようにします。その後に抹香をぱらぱらと火へ。火に抹香を全てくべたら合掌一礼し、遺族にも一礼します。次の参列者に場所を譲ります。

基本的にこれが宗派共通のお焼香の手順です。お焼香の流れは大体この通りなのですが、宗派によって「回数」に違いがあります。回数とは、「つまんだ抹香を何回火に落とすか」と「額に何度いただくか」の回数を指します。この回数は宗派ごとに異なっており、宗派によっておおむね1~3回となっています。

宗派によって異なるお焼香の回数

それぞれの宗派によって「額にいただく回数」と「つまんだ抹香を何回火に落とすか(お焼香の回数)」が異なっていますが、これはそれぞれの宗派によってお焼香や数字に異なった意味を持たせているからです。数字の「一」に大きな意味があると考える宗派は、お焼香は一回であったりします。「三」という数字を重視している宗派では、お焼香は三回行うことがあります。主だった宗派のお焼香について見てみましょう。

  • 真言宗 お焼香、額にいただくのともに3回
  • 曹洞宗 お焼香は2回、額にいただくのは1回(額にいただかない場合もある)
  • 浄土宗 お焼香は1~3回、額にいただく回数には特に定めはない(お焼香の回数に合わせる)
  • 天台宗 特に回数の決まりはない。お焼香、額にいただく回数ともに1~3回
  • 日蓮宗 1回または3回(額にいただかない)
  • 臨済宗 お焼香は1回(額にいただかない)

ご紹介した回数はあくまでそれぞれの宗派の基本的な回数であり、地域の風習や住職の考え方によってお焼香の回数が変わってくることもあります。

また、近年では宗派問わずお焼香は宗派に関わらず1回だけ行うことがあります。これはお葬式の参列者が多い場合に3回お焼香をしてしまうとかなりの時間が必要になるからという理由からです。事前に葬儀を出すお宅の宗派を把握していない場合や、特定のお寺の檀家になっていない場合もあるからという理由もあります。

もしお焼香のマナーに迷ったら、喪主や親族などのお焼香を見ておくといいでしょう。周囲の人も一回で済ませているなら、宗派によって別の回数が定められていたとしても、周囲の人に合わせてお焼香を1回で済ませてしまうのもいいでしょう。

最後に

葬儀のマナーの中でも、葬儀本番で必要になるお焼香のマナーについてお話しました。

宗派ごとにお葬式そのものの微細な違いや、道具の違い、マナーの違いがあります。これに地域の慣例による違いも加わり、日本の葬儀は仏教式が主でありながら、かなり多様化しています。

自分の地域の葬儀のマナーを完璧にしていたとしても、隣の自治体の葬儀に参列したらあまりにマナーが違っていて戸惑ったということも珍しい話ではありません。お焼香のマナーも同じで、自分の地域のマナーとお隣の自治体のマナーでは異なっていることが珍しくないのです。

お焼香のマナーのポイントは「宗派ごとに回数が異なっている」というところです。もしマナーについて疑問があれば、お葬式の行われる地域の葬儀店や知人に確認してみるのも良い方法です。また、葬儀の他の参列者の焼香マナーをそっと確認してみるのも、マナー違反をしないという点では有効な方法です。

ただ、葬儀で大切なのはマナーを完璧に守ることではなく、故人や遺族への気持ちです。お焼香の回数を書いてしまったとしても、真心のこもった素晴らしい葬儀であったと遺族や参列者が感じるような葬儀にすることが一番大切なことではないでしょうか。