喪服の時に適切なメイクのマナーとコツ

人生の中で数多く経験する儀式の中で、葬儀は最も格式張った儀式の一つと言えるのではないでしょうか。

確かに他にも結婚式や成人式といった儀式にはそれぞれTPOに相応しい態度と服装、メイクが求められます。格式張っている、厳しいと言われればその通りかもしれません。しかし、葬儀ほど「厳格な」格好は求められないと言えるのではないでしょうか。

「結婚式や成人式もきっちりするべきでは?」と思うかもしれません。では、考えてみてください。結婚式に出席する女性に正装の色は決まっているでしょうか。

結婚式では花嫁の色である白色は避けるべきと言われますが、近年は水色や桃色、黄色に紫など、多種多様のワンピースや着物で出席する女性が見受けられます。成人式でも、色鮮やかな着物やワンピースが見受けられ、中には飾り帯を使ったり、わざと粋に着崩したりするなど、自分らしさを追求した格好も見られます。結婚式や成人式はお祝い事であるため、服装に合わせた色でメイクをすることも多いようです。

では、葬儀はどうでしょうか。葬儀の方がどちらかというと「厳しそう」「タブーが多そう」という印象があり、使っていい色や化粧品も「決まりがある」という認識の方も多いでしょう。

絶対というわけではありませんが、葬儀には基準があります。

今回は喪服の時に適切なメイクのマナーコツなど葬儀時の化粧についてお話しします。

コツを覚えると簡単です。ポイントを三箇条で覚えてしまいましょう!

メイクとTPOの関係とは?

結婚式や成人式の時は、衣装に合わせてメイクを派手にすることはよく行われています。これは、ある程度服装に合わせないと服だけ派手で顔の印象が負けてしまうという現象が起きてしまうからです。

結婚式にお呼ばれすると、お祝い事ですから明るめの色の服を選んで式に出席する方が多いでしょう。服が明るめですから、そこにやや暗めなベージュの口紅を合わせたらどんな印象でしょうか。違和感を感じる方が多いのは明確でしょう。

近年、成人式では貸衣装を着て出席する方もいるとか。華やかな臙脂に大輪のボタンの意匠が鮮やかな振り袖を着て、メイクを薄くナチュラルにしたらどうでしょう。着物の色が派手だけに、着物だけが目立ってしまうと感じませんか。

女性の場合、儀式に出席する際の服の色に合わせてある程度メイクの色や濃さを調節することが必用になります。メイクの色や濃さにさえ気を配ることができれば、化粧品が手頃な値段のものなのかブランド物なのかは問いません。ポイントはTPOに合わせたメイクの濃さと色なのです。

葬儀ではもちろん黒の喪服を着用することになります。

真珠の首飾りやブラウスなどは多少黒以外の色を使うこともありますが、基本の色は「黒」です。そして葬儀は「ある人とのお別れの式」であり、「遺族や他の参列者が静かにお別れを告げ故人を想う式」でもあります。

近年は故人の趣味である音楽や踊りなどで明るくお別れを告げることもありますが、主流はやはり「しめやか」「静か」「故人への想い」「お別れ」「遺族や参列者が悲しみなどの心と向き合う」場です。だからこそ、儀式の意味と喪服の黒に合わせた化粧が必用になります。

葬儀のメイク三箇条をおさえよう

葬儀のメイクのポイントを三箇条でまとめましょう。

  1. 「おめでたさ」や「祝い事」「奇抜さ」を連想させる色は避ける
  2. 「凝った」よりも「ナチュラル」や「シンプル」で
  3. きらきらしたパウダーやグロスは控えた方が無難

以上、三つのポイントです。

葬儀には具体的に「どの色が正しい」という考えはありません。口紅やファンデーションは各人の肌の色によっても発色が変わってきますし、それぞれの人の肌の色と合うかどうかという問題があるからです。

そういった事情を考慮した上で、なるべく三箇条に添ったメイクを心がければ失敗が少ないでしょう。

今まで葬儀に出席した経験のない女性は母や義母などの葬儀に出席した経験の豊富な先達に「この口紅の色で問題ないかな」など、意見を求めてもいいでしょう。葬儀場や葬儀屋で仕事をする女性に意見を求めるのも有効な方法です。

パーティメイクよりもオフィスメイク?色使いのポイント

葬儀は「人の死」に関する儀式ですので、あまりにお祝いを連想させる色は避ける方が無難です。口紅の中でも濃い赤やピンクよりであればベージュ系の色合いの方がいいでしょう。「華やかな場に出るメイク」ではなく「オフィスメイク」の印象で化粧品の色を選べば失敗が少ないです。

ただ、ベージュ系の仕事にも使えるような色の口紅の色は、肌の色の関係でどうしても合わないという方がいます。

ベージュの口紅を塗ることで顔色が悪く見えたり、陰気に見えたりする場合は赤やピンクの口紅を薄めにさっと引くと良いでしょう。あくまでナチュラルにすることがポイントです。色が濃い場合は重ね塗りせず、色を薄めに使うところもポイントです。アイシャドウなども同じように、派手な色合いは避けて薄く使うようにすればいいでしょう。

青や緑といった色の口紅も多数販売されていますが、葬儀はファッションの場ではないためスタンダードな色をセレクトした方がいいでしょう。

葬儀にグロスやフェイスパウダーは使っていいの?

グロスやフェイスパウダーを使ってはいけないわけではありませんが厚塗りは控え、色によっては使用を控えるのがいいでしょう。

「派手」「華やか」「凝った」メイクより、「シンプル」「ナチュラル」「控え目」が葬儀のメイクのコツでありマナーです。

もし迷ったら「同じベージュでも控えめな方」「派手さより薄化粧」と考えて化粧品やメイク法を選んでみてください。

最後に喪服を着てメイクをした状態で鏡の前に立ち、喪服に対してメイクが派手すぎないか、顔だけ目立たないかはよく確認してみてください。ちょっとメイクが派手だと感じたら真珠のネックレスなどの装飾品を外してみるだけで印象が少し控え目になります。

最後に

自分がどんな化粧をしようが勝手であり、自分の趣味の問題であると思うかもしれません。しかし葬儀は遺族がいて、他の参列者も多数訪れます。

「人の死が関わる場所である」わけですから、当然多くの方がTPOに合わせた身なりで参列します。自分の個性を出し過ぎると集団の中で一際浮いてしまうことにもなりかねません。

葬儀の主役はやはり故人ですから、故人の遺影より派手な格好をし、派手なメイクをしてしまうと恥をかいてしまうかも知れません。

葬儀は故人の人生の幕引きの場です。「シンプル」「ナチュラル」「濃いよりは薄く」「色をよく考える」「フェイスパウダーやグロスに注意」といったポイントを押さえ、人生という名の物語の幕引きを手伝う係員になったつもりで化粧品を選んでみてください。