誰が務めるべきなの?喪主の役割と決め方について

葬儀はどの家でも「非日常」ともいえる事柄です。常に親族が亡くなり、年に十回も二十回も葬儀を出さなければならないケースは、かなりのレアケースと言えるのでしょう。確かに自分の家で葬儀を出した年に他の家から葬儀参列の通知が届くことはあります。そして、実際に他家の葬儀に何度か足を運ぶこともあるはずです。ですが、毎週のように葬儀に関わるということは、葬儀関係の仕事でもしていなければ、まずありません。つまり、葬儀は仕事や生活の色々なこととは異なり、日常的なことではないということです。

非日常ということは、慣れていないということでもあります。実際、インターネットを検索すると、葬儀の進め方から香典の包み方、金額まで色々な情報が出てきます。葬儀を経験した回数が比較的多いと、親族から葬儀について質問を受けることもあります。葬儀が非日常だからこそ、多くの人が「どうすればいいの」「急に困った」となってしまうのです。日常的によく行っている家事や仕事では「私はこうしている」という意見交換はありますが、知識がなく大慌てで教えてもらうということはほとんどないはずです。

非日常である。だからこそ、いざ自分が当事者になった時に、大急ぎで知識を仕入れたり、知っていそうな人に確認したり、困ってどうしたらいいかわからなくなったりするわけですね。

今回は葬儀の数ある知識の中でも、「喪主」に焦点をあててお話します。喪主とはどんな人のことで、誰が務めるものなのでしょうか。喪主にはどんな役割があるのでしょうか。これからすぐに葬儀という差し迫った状況になる前に、基本知識を知っておきましょう。優しく解説します。

「喪主」は葬儀の先に立つリーダー

「喪主」とは、葬儀を先頭に立って進める人のことをいいます。漢字を見ると「喪」と「主」で言葉が構成されています。読んで字の如く、喪の場(葬儀)で主(先に立つ)人を意味します。言葉の意味を知ると、大体喪主がどのような立場で、どのような役割を担っているかを想像することができるのではないでしょうか。

喪主は葬儀の先に立つ人ですから、葬儀の先頭に立って葬儀を進めます。また、葬儀店や葬儀会場との話し合いや契約においても中心となり、参列者への挨拶でも中心人物となる存在です。葬儀のまとめやく、故人を見送る側の総代表と捉えておくとわかりやすいのではないでしょうか。

葬儀には多くの人が関わります。故人の遺族や親族、葬儀場の従業員。火葬場の職員、葬儀店の従業員。そして縁の深い浅いは関係なく、参列者。ご近所の人。葬儀の規模により人数は異なりますが、葬儀は故人が主役の人生最後の舞台であり、故人を天国に送るための儀式ですから、ちょっとしたホームパーティではきかないくらいの人数の人が関わります。

小規模な人でも葬儀屋やお坊さん、葬儀場や遺族を合わせると十数人以上は一つの葬儀に関わりを持つことになります。大規模な式になると参列者も数百人を超え、準備のために動き回る人も数十人単位となります。そう、葬儀はたった一人でできるものではなく、規模に関わらず数人から数十人、多い時で数百人単位の「集団」で行うものなのです。だからこそ必要になるのは、「中心になる人」「集団のまとめ役」「代表」なのです。

喪主の役割とは?どんなことをすればいいの?

例えば、葬儀の段取りを組む時に葬儀店や葬儀場の従業員は誰に確認を取ればいいでしょうか。葬儀にはたくさんの人が関わります。お酒やお茶を運ぶ親族から手伝いにやってきた奥さんに了解を取ればいいでしょうか。あるいは、親族の中から祭壇の組み立てを手伝いにきたおじさんに話をすればいいでしょうか。

葬儀の場合、どうしてもお金が必要です。契約の話にもなります。こんな時は、葬儀を主催する側の中で一人「契約やお金の話を代表して決める人」がいると、後で「言った」「言わない」の問題に発展し難くなります。また、お金を拠出する人以外が勝手に契約を結んでしまい「こんな金額であるとは聞いていない」といったトラブルを防ぐことができます。

葬儀という儀式の準備も集団でしなければいけないため、指示出しをする人がどうしても必要になります。集団ですから、一人一人が良かれと思う準備をしてしまうと、場が混乱してしまいます。学校の時、クラスの出し物をする時にクラス委員や実行委員が先に立って指示を出したり、クラスをまとめたりしなかったでしょうか。喪主の役割は、まさにクラス委員や葬儀の実行委員長なのです。

簡単にまとめると、喪主は次のようなことを行います。

  • 葬儀屋や葬儀店との話し合いの代表
  • 葬儀店や葬儀屋と契約する場合に契約者となる。または主導的に契約を詰める
  • 葬儀の準備の指示出しをする
  • 葬儀の参列者へ挨拶をする。喪主として挨拶全般や参列者との話、葬儀の流れを管理する
  • 金銭的な準備の代表ととりまとめ
  • 葬儀関係の通知の代表者となる(喪主の氏名で通知を出す)
  • 親族や遺族といった葬儀を主催する側の人間にこれらのうちどれかを任せる場合、喪主が主導となって仕事をお願いする

喪主は父親や長男が務めること多し!ただし決まりはない

これらの葬儀上の仕事は喪主が中心に管理しますが、喪主の依頼により他の親族や遺族が行うこともあります。ただ、喪主は葬儀の代表のような存在ですから、喪主から仕事を受けた場合も最終的に喪主に報告し、何かあれば喪主の判断を仰ぐことになります。送り出す側の最終的な意思決定をするのも、主に喪主が中心となって行います。

さて、喪主の役割を知っていただいたところで、喪主はどうやって決めたらいいのかをお話ししましょう。

喪主は一般的に各家の家長、つまり「お父さん」や「長男」が選ばれることが多いです。葬儀に参列した経験のある方は、喪主の名前を見ると、その家のお父さんや長男であったというケースが多いことをご存知ではないでしょうか。しかしながら、現代は昔の家長制度が当然だった時代ではありません。法律で喪主は長男やお父さんに限ると決まっているわけではありません。長男やお父さんが一般的ではありますが、体調などの関係で喪主をこなせないこともあります。

その場合は、遺族といった故人と近しい人の中から喪主を立てることになります。選ぶ際はここまででお話した喪主の役割を考え、喪主を務められる責任感と全体を見渡す視野を持つ人を選ぶといいでしょう。もちろん、お母さんや娘でもいいですし、兄弟姉妹が喪主を務めることもよくあることです。故人の近しい親族でよく話し合って決めるといいでしょう。

最後に

喪主は葬儀の中でも故人を送り出す側のリーダーとしての任務を担います。葬儀は大変ですから、仕事は親族や遺族で分担することが一般的です。喪主はそんな葬儀を主催する側に仕事を割り振り、意思決定の中心となり、指揮をし、契約の主導をする、学校の文化祭におけるクラス委員や学校祭実行委員のような存在です。

一般的に喪主は父親や長男が務めることが多いのですが、最近はこの限りではありません。父親や長男以外が務めることも多くなっています。喪主の役割をよく考え、遺族や親族の中から故人との縁も参考にして選ぶことがポイントです。