日本人の生活の中に「先祖への敬い」「大切な伝統行事」として、ごく自然に溶け込んでいるお墓参り。
それぞれの国にその国の歴史や文化によって生活の中に行事があるように、日本にも生活の中にたくさんの行事が存在します。そんな行事の一つがお墓参りであると言えるでしょう。ごく自然にハロウィンやクリスマスを楽しんでいる日本人は、お盆や正月、お彼岸などには、まるで生活に組み込まれているが如くに「そうだ、お墓参りしなきゃ」と考える方が多いようです。
お墓参りといえば、基本はお彼岸やお盆です。では、こうした日付は守らなければならないのでしょうか。決まった日以外にお墓参りをするのはNG行為なのでしょうか。それとも、特に日付や時期を気にする必要はないのでしょうか。
お墓参りには適した時期とタイミングがあります。日本人の生活の一部「お墓参り」について、知識を深めましょう。
お墓参りをしてはいけないタイミングは?
基本的にお墓参りには何時行っても構いません。お坊さんなどのお墓を預かる方は檀家の方がこまめにお墓掃除をし、手を合わせている様を目にすると好ましく感じるという方が多いようです。
公共の場という性質のある墓地は、多くの場所が二十四時間開かれており、自分の都合の良い時、そしてお墓参りをしたいと考えた時に参ることができるようになっています。お墓参りで大切なのは心です。「そうだ、お墓に行って手を合わせよう」と思う気持ちはとても大切なもの。その気持ちがふっと湧いた時にお墓参りをすることがNG行為であるはずがありません。「思い立ったが吉日」というわけではありませんが、気が向いた時にお墓に参っても、何も問題はないのです。
お墓は先祖の眠る場所であると考えれば、亡くなった先祖たちも手を合わせに来た子孫を「よく来たよく来た」と好ましく思ってくれるのではないでしょうか。何だか、夏や冬に里帰りした時に、おじいちゃんやおばあちゃんがご馳走を用意して歓迎してくれるような絵面が浮かびますね。
しかし、これはあくまでも基本。現実は「何時でもお墓参りOKです」というわけではありません。思い立ったらお墓参りを基本としながらも、「お墓参りしてはいけない時」というものが存在します。お墓参りがNGのケースは主に二つあります。
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夜間や逢魔が時
逢魔が時とは、昼と夜の中間にある時刻です。薄暗くなってきて、目の前を歩いている人の顔も暗さでよく見えない夕方がこの逢魔が時にあたります。黄昏時ともいいます。
逢魔が時は読んで字の如く「魔に逢う時」です。災難や魔に逢う時刻とされています。確かに、薄暗くなって目の前の人の顔がよく見えないと、ぎょっとしてしまうところがありますね。逢魔が時は魑魅魍魎の跋扈する時刻とも言われていますので、お墓参りは避けたいところ。「別にお化けなんて怖くないよ!」という方も、昔からの日本の風習や考え方に則っておきましょう。
夜間はお墓参りをするには危険な時刻です。「別にお化けなんて怖くないよ」という方、違います。怪談話の問題ではありません。多くのお墓は夜間にお墓参りをすることを想定していませんので、街灯などの整備があまり進んでいません。街灯がまったくないわけではないのですが、市街区に比べると少なく、足元がおぼつかなく感じることでしょう。怪我を避けるためにも、街灯の少ない夜間はお墓参りを避けることをお勧めします。
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墓地が閉鎖されている時
墓地が閉鎖されている時間帯や時期もお墓参りは控えましょう。
例えば、お墓を管理しているお寺が墓地のある区画を閉めている時刻。そして、お寺内部の参拝者に開放している区画を閉めている時刻。お墓を管理するお寺にも都合がありますので、夜中の1時に「お墓参りをしたいので開けてください」とお願いするのは困りもの。墓地を管理しているお寺が「お墓参りは〇時から〇時の間でお願いします」という条件を出しているなら、その時間帯に合わせるようにしましょう。また、地域によっては、墓地のある地域が特定の季節に閉鎖されることがあります。一例としては、雪の深い地域。お墓が山奥にあり、冬場は道が危険である、除雪が行われないなどの理由から閉鎖状態になることがあります。がけ崩れで危険などの事情から閉鎖されるようなところもあるようです。お墓参りをしたいと思い立っても、リスクがある場合は避けるようにしましょう。御先祖様だって「今はお墓まで来るのは危険だから仏壇で手を合わせてね」と言ってくれるはずです。
お墓参りに適した時期とタイミングとは
お墓参りに適さない時刻を除けば、後は基本的にどんな時にお墓参りをしても構いません。お墓は先祖の眠る場であると共に公共の場であるということを意識して、マナーを守りお参りをしてください。
前述したケースにさえ気をつければ基本は何時でもOKではありますが、「多くの人がお墓参りをする時期とタイミング」というものが存在します。「とりあえず何時行けばいい?」という方は、以下のようなお墓参りシーズンに合わせてみてください。
人生の節目
就職や進学、結婚、出産など、人生の節目にご先祖様へ報告をします。昔から人生の節目にお墓参りをする家は多くありました。お墓が「家」「家族」「一族」の象徴としての役目を果たしていたからです。現在も家族の誰かの人生の節目に家族そろってお墓に手を合わせに行くことは、よく行われています。
命日
家族の命日にお墓参りをする方も多くお見受けします。亡くなったばかりの家族を偲び、冥福を祈るという意味で年に一日の命日や月命日にお墓参りをすることがあります。
お盆・年末年始・彼岸
「盆暮彼岸」とセットにされることの多い、お彼岸やお盆、そして年末。日本では最も一般的なお墓参りのシーズンではないでしょうか。年始も、新しいスタートということでご先祖の眠るお墓に手を合わせに足を運ぶ方が多いタイミングです。
年末年始は行事が重なる忙しいシーズンです。29、30、31・・・個人の都合に合わせて好きな日付でお墓参りをしても差し支えありません。ただ、29日は「苦(9)しみが二重(2)になる」という語呂合わせにより、お墓参りを避ける傾向にあります。
最後に
お墓参りは自分の生きたいタイミングで行って差し支えありません。ただ、2つお墓参りを控えたいケースがある他、時間帯や立地によっては「公共の場」であることを考えて、お墓参りを自己判断で控えたい場合もあります。
お墓参りをする時期とタイミングとして一般的なのは、盆・彼岸・年末年始・人生の節目・命日・月命日などです。この他に故人のアニバーサリーなどで墓参りをする方もいます。お墓参りのタイミングに悩んでいる方は、こういった日付に合わせてお参りするといいでしょう。