お清め塩の役割や正しい使用方法などの豆知識

日本人にとって塩は最も身近な調味料です。

甘味の場合は甘さを引き立たせる場合に塩を使うこともあります。お漬物や煮物にも塩を使いますし、お吸い物にだってお塩は付きものです。サラダやお寿司、天ぷらなどはお塩でいただくこともあります。日本の料理の中でお塩が関係しない品があるのだろうかと思うくらい、日本人の食にお塩は欠かせないものなのです。

同じくらい、日本の行事にお塩は欠かせないものです。神棚にお供えするものは、日本酒にお米、そしてお塩。神事にもお塩は欠かすことのできないものです。そして、誰かの人生の幕引きでもある葬儀にも、お塩は欠かすことのできないものです。日本の葬儀は仏教式が多く、葬儀場から帰宅する時にお塩をもらうことが多いです。

皆さんも参列の際に「ああ、確かにもらった」「小分けのパックで配布された」と覚えていらっしゃる方が多いのではないでしょうか。地域や葬儀を出す家によっては、火葬場や葬儀場との行き帰り、自宅前など、まめに塩を配ることもあります。お葬式といえば葬儀の準備だけでなく「お塩の準備もお忘れなく」が日本のお葬式です。

しかし、そんな「お塩」について考えたことはあるでしょうか。何となく用意したり、何となく受け取ったりしていませんか。葬儀にとって大切なものである「お塩」についての知識を深めましょう。お清め塩の役割や正しい使い方は、葬儀への参列、そして自分の家で葬儀を出す時に持っておきたい知識なのです。

お清めの塩って何?「お塩」と「穢れ」とは

お塩の中でもお葬式で使われるお塩を「お清めの塩」といいます。葬儀会社によっては葬儀プランの中にこのお清めの塩が含まれており、葬儀の準備段階で「何個必要でしょう?」と、葬儀に使う小分けのお清め塩の個数を確認されることがあります。中には葬儀会社のプランに入っていない場合があるので、準備段階でなるべく確認しておきたいところです。

そんな「お清めの塩」ですが、葬儀で渡す・渡されることには、当然ですが意味があります。

塩には邪や魔を払う力があると言われます。昔から塩は腐敗を防ぐ力があり、大切にされていました。保存食作りに塩が欠かせないのも、塩が腐敗を防ぐ力があったからです。その塩辛さや色から、どこか神聖さや、邪を跳ね除ける力があると信じられていました。神棚へ捧げられる物の一つには塩があったため、神の力を連想させるところもあります。「腐敗を遠ざける」「塩辛さや白さが神聖さを感じさせる」「神様に捧げるものだから、清いものに違いない」と考えられ、塩が穢れを払うものとして定着したようです。

お清めの塩を葬儀で配るのは、塩によって「死」による穢れを払うことが目的であると言われます。皆さんは喪中に神社への参拝や、慶事への出席を控えるということをご存知でしょうか。現在は必ずしもそういったことが行われているわけではありません。日程がどうしても合わないなどの理由から、忌中に慶事が行われることもあります。しかし、「お祝い事への出席は控えた方がいいのか」「控えるのはどのくらいの期間なのか」と悩む方が多いことからわかるように、親族が亡くなった場合は、慶事や神社への参拝、新年の挨拶などを控えることが一般的に多く行われています。その理由の一つがこの「死の穢れ」なのです。

死の穢れとは、「死を招いたもの」を指します。亡くなった故人を指すわけではありません。人が亡くなるには、死に繋がる原因があります。「病気」「事故」「痛み」「出血」「苦しみ」「悔い」など、死には色々な負のものが付きまといます。それら負のもの全てをまとめて一種の穢れと考え、お清めの塩で払うのです。

ただ、宗派によっては「死」を穢れとは捉えず、お清めの塩を使わないという場合もあります。

お清めの塩を使う意味と手順とは?

穢れを「自宅」「自分自身」「親しい人」に持ち込まないように払うわけですから、葬儀を終えて帰宅してから「あ、そういえばお塩をもらったな。今から使ってもいいよね」では意味がありません。

葬儀会場の出入り口や自宅の玄関前、火葬場から帰宅して家に入る前など、清めのお塩は家の玄関に入る前に使います。「家の中に持ち込まないようにする」ことに意味があります。帰宅後に家でのんびりしてから何となく使うのではなく、家に入る前に、ささっとお塩を使うことで穢れをシャットアウトするのです。

清めのお塩は故人に手を合わせて葬儀場から出た時や、自宅の玄関に入る前の外、火葬場から出る時や火葬場から自宅に入る前の外などで使われます。「とにかく外から家に入る前」「葬儀場や火葬場から出た時に」と覚えておくといいでしょう。何度も行う場合もありますが、一度だけ帰宅のタイミングに合わせてお塩を渡されて使う場合もあります。

具体的な使い方は、次の通りです。

  1.  手を清める
    水と柄杓を使い、手を丁寧に清めます。葬儀に出席しなかった人に柄杓で水をかけてもらうのもいいでしょう。最近は省略されることが多いです。
  2. 塩で穢れを払う
    胸、背中、足の順で塩を振りかけます。量は大体一つまみ程度です。塩を振った場所は手で簡単に払います。足に振る時は足もとに振るのがポイントです。自分で振りかけてもいいですが、家族や一緒に葬儀に参列した方にかけてもらってもOKです。近年では、この②だけすることが多いです。葬儀の際に用意された塩は基本的に食用ではありません。使わなかった場合や残ってしまった場合は食用として転用せず処分してください。
  3. 足もとの塩を踏む
    ほとんどの場合②で終了される方が多いですが、手順としては足もとにぱらぱらと落ちたお塩を踏むところまでで終了します。足の裏にも穢れがあるからです。雨の日などは振った塩が既に見えなくなっていることがあります。こんなケースでは無理に踏む必要はありませんのでご安心ください。また、時間がない、手順が難しいという場合は②だけでも問題ありません。地域によっては②を葬儀場の出入りの際に何度も行うことがあるようです。地域やその方の考え方に合わせて行ってください。

最後に

葬儀につき物の「お清めの塩」は、葬儀場や火葬場から穢れを持ち込まないように使います。簡単に体へ振ることにより、神聖な塩が死の穢れを払ってくれるという考え方です。現在は手順を省略されることも多いですし、人目や場所を考えてお清めの塩を振りかけることを控えることがあります。

お塩は、日本人と切っても切れない関係にあります。日常の冠婚葬祭や行事、食卓の中に当たり前に存在しているのがお塩です。葬儀の豆知識として、お塩の使い方や清めの塩の歴史などはおさえておきたいですね。